夜半、卓上、書きかけの詩
罪状 / Sin
観上げても見えないんだ
瞳の外、くもる影
脚の奥に絡んでいた
胸の奥で鼓動一つ、
聞こえないままなんだよ
抉るような記憶だけ
歩いても走っても
野良犬に吠えられるようだ
見つめる先にあるのは
憐んでいるような、
見くびっているような
何も亡いのに
穴のような記憶にそっと居ついた
聲が消せない
憎い、にくい、にくい
あんたが憎い。
そう、これはそんな
暗い、溟い、昏い
そんな言葉をただ書描掻き立てる。
ざらり、ざらりざらり、
あの日の正論も、言った顔も
溶けて、熔けて、融けて
許せない場所へ墜ちていく。ただ ──
隣を走るバイクの音、
すれ違う話し声
呼吸すら逸った
殴られるような
騒いでるような
言丿葉の感情
抉られているような、
靄かかっているような
言葉だけ埋まった
その淵をなどる
過ぎ去った全てが
ただただ綺麗で
あの日、そう、あの日
その口で言った「許せない」も
抱えたその
ただの感情のはけ口で
ただ、只々、
正しいことさえ言えなくて
釈せない。そう
許せない人がそう言っていたんだ ──
誰か 誰か 誰か
誰でもいいよ
ねえ、この想いを
ただ、ただ、ただ
抱えた何かが惨むから
憎い、にくい、にくい
- 自分 - 貴方 - 誰か - が憎い。
そう、これはそんな
痛い、悼い、居たい
心境に遺って消えない
罪状
君と独白 / Regret and you
鈍色の空を見ていた
君の蒼い静脈のよう
埃ばかり積み重なっていくなら
捨てる場所をさがそう
だれもいない方を見ていた
君の云う声の掠れ方
重いものばかりが増えて
誰にも読めない遠い、遠い面影
はらり滴る花の雫に
過ぎ去る春ばかり見ていた
水の底、薄い陽の光
伸ばして届かぬ霽れの色彩
想い出も 君も 聲も
あの夏も、此の春も
想い願ったこと全て
いつかの日々を描くから
淡いうちに捨てればいい
あの日が今日も、滓るから
きっと君が棄てれない何か
そう、喩うなら穴のよう
埋めるはずの鼓動さえ
あの日の奥で滲んでる
覗き込んだあのそらは
今だって
今だって──
─────────────
嫌な、厭な、否な、いやなことばかり
増えてしまうから
それを吐き出していた
君の言葉は咎の色
ねえ、棄てれないんだね
今やもう
置いてってしまえなんて、きっとぼくにはもう
─────────────
いつかの声が聞こえて
ふと顔を上げた、その先の
空の色が褪せてさえ、消えない色(咎、憧、願)が
眼を刺す
君の言うことを套ねた
褪せても 水に溺れても
消しようない君の何かの
だから そう
`きみ`の、ねえ
となりにいたい
命は斯くも軽いから / What weight was too heavy
何かがこんなに痛くて、
何かを失くしてるように
ただただ、何かが痛くて
やましさばかり積もって
ただしく口を塞いだ
そんな暮れの末
いつかの言葉も 沈んで溶けてく
奇麗なことだけ 探していればいいのに
それでいいよ。それでいいよ。
すべて言い訳でいいから。
心より、言葉より、
重い今なら要らないと
生きていいよ、生きなくていいよ。
君がそう願うのなら
心より、言葉より、
重い何かが視たいだけ。
なにより重いらしいと
誰かが口にしていた
随分軽い響きで、嫌味に思えた
望んだ軽さで この眼を瞑って
胸に空く穴に埋まらない藍を結った
頷くことも出来ない愛しさなら、
亡いのも同じだから ただ、下を向いた
色のない 色のない
君の姿をただ視たい
愛しさも 卑しさも
淋しさが今日を描くから
言葉ごと 言葉ごと
命より重い君を
こころより 言葉より
重い泪は君の色
誰かを探してる侭
何かを忘れてるように
君を描いている
軽いままに
まだ、軽いままに──
無題
それは きっと君だけの──
届かない想いを
胸の中に仕舞い込んでしまった
誰かが言っていた "綺麗事" じゃ描けない
君の気持ちを
繋がった点も
描かれた線も
きっとそれは輝いた星座で
どんな理想論も、
過ぎ去ったことも
これからの時間も
それだけじゃ "音楽" にはなれない
だから──
描こう 君の願いを
それが君の歌になるならば
ねぇ、君の想うこと
それをすべて
歌おう
もしそんな音楽が届いたなら
それが止まったこの時を
動かすよ