大学のとき、インカレでバンドをやっていた、ひとつ下の後輩が初音ミクのことが好きだった。
海外育ちだったゆえに周囲に馴染めずにいた高校のころに、とある楽曲がいたく胸に刺さり、ずっとずっと、心の支えとしていたらしい。
三回生の夏、彼女から、ひとつ曲を書いてほしいと頼まれた。その楽器のアニバーサリーソングを作りたいらしい。当然のように、彼女は、それを自身のノートパソコンにインストールしていたが、なにぶん作詞のセンスがないから……と、そう言っていた。
当時は、いまほどその楽器について詳しいわけじゃなかったのだけれど、彼女のその語り口から想像を膨らませて、彼女のパソコンの初音ミクを歌わせて、この曲を書いた。
彼女とは、いちど疎遠になって久しかったのだけど、先日、なにの縁か、行きつけの喫茶店にて再会をすることになった。今でも音楽を、──うたと、DJ を、しているらしい。
何度か連絡を取る中で、この曲の話が出て、こんどはもう少し音を整えて曲を出してなおそうと、そうなった。あのミクの音源を、今でも持っていたらしい。
そんなわけで、ふたりでデュエットを録音して、あの時のミクをオク上に置いて、一曲を作った。
これは、そんな一曲。
花隈千冬